服のままのRちゃんを縛る。
私が縄を手にすると、いつものようにRちゃんは正座をして両手を背中で組んだ。
ストライプの濃紺のビジネススーツ
後ろ手。
上下に縄を廻して胸を絞りだす。
ブラウスのボタンを外して、ブラジャーをずらして胸をだす。
乳首が立っていて、指ではじくとああと濡れた声をだす。
「膝立ちしなさい」
「はい、ご主人様」
スカートをまくって、腰のところでひと回りさせてから、コブを作って下着のまま股縄。
タオルをねじって猿ぐつわをする。
横向きに寝かせて、放置する。
征服された女の顔になる。
縄と涙
不安げな泣きそうな表情が、少しずつあきらめたような、覚悟を決めたような屈服したM女の顔になっていった。
かわいいRちゃんが、M女に変化する瞬間を私は凝視していた。
見られていることをRちゃんも意識して、すねたようなあまえたような顔をした。
裸ではないことは、普段の自分が残っていて、その自分が縛られいじめられるという感覚がある。
これからどういう調教をされるのかという不安と、服従している安堵感がまざったか弱い目で、私をじっと見ている。
白いガーターがかわいい。
スーツで、胸をだしてスカートをまくって下着のまま女に縄をかけられている。
目が合って、ああと喘ぐ。
お尻をだしなさいと命令すると、ゆっくりとうつ伏せになる。
少しそのままでいてから、あきらめたように膝を立ててお尻を突きだす。
艶のある、小さな喘ぎを断続的に続けながら、その姿勢を崩さない。
右の尻を叩くと、いつものように、背骨を反らせて尻を捧げるようにつきだした。
股縄のまま下着をずらしてローターを静かにいれる。
「お尻を振って」
ローターを強くして、平手で叩く。
くぐもった呻きをあげている。
顔にかかっている髪をどけて、顔をだす。
Rちゃんは少しだけ泣いた。
俺がこの子にできるのは、こんなことだけなのかと自分を責める。
もっと、愛とか、いろいろ。。。
猿ぐつわをはずす。
ローターを弱くして、せつなく刺激を与え続けながら人差し指と中指でRちゃんの唇をなぞる。
その手を止めると、従順に、恭順の証しとして指をなめる。
口に含ませてしゃぶらせながら、少しずつMの表情になっていくRちゃんをじっと見る。
艶めかしい喘ぎが、口元にかかる茶色い髪を揺らす。
裸より、恥ずかしさがあるのだろう。
お尻の方に廻って、ゆっくり乗馬鞭で気合を入れるように弱く打つ。
スーツの上半身とガーターで、鞭をねだるように尻をくねらせる。
いく寸前でなんどもローターを止めて、火照った体をもてあますRちゃんの縄をほどいた。
なぜ縄をほどかれたのか、知っている。
ベッドのふちに座る私の前で、静かに脱いでいく。
私の奴隷として、所有される女として、Mとして、私に見せるために、躾けたとおりに、ゆっくりと、私のために裸になっていく様を、私はスピリットに焼きつけようとしていた。
Rちゃんは、自分の人生を生きるために、もう少ししたら地元に戻る。
ふつうの、あたりまえのしあわせを追いかける女になる。
何気ない毎日を一生懸命生きる女性になる。
小さなことで喜んだり、泣いたり笑ったりしながら年をとっていく、当たり前の人間になる。
しあわせになりなさいと、最後の命令を伝えるのはもうすぐだった。
裸になって、奴隷の作法として、私の前で、膝で立ち、両手を頭の後ろで組んで体を捧げながら、私を見る瞳に、そんな感じがわかった。
それは、主従だったからだ。
SとMであったこと、主従という関係性、年が離れていること、それからもっといろいろ。
恋人のような時間。
都会の中で二人で震えていたこと。
笑ったこと、泣いたこと。
おたがいを思いやる中で、逡巡したこと。
Rちゃんは大人の女になって、私は年をとった。
生まれたままの姿になると、静かに、後ろを向いて縄を受けるポーズをとった。
汗で輝く体をきっちり高手小手に厳しく縛めると、Rちゃんの哀しさが伝わってきた。
それは、私の孤独に対してのものだった。
のめり込まないようにしようとしたのに、いつも無邪気にぶつかってきてくれた。
私の荷や苦や孤独を共有しようとしてくれた。
東京はごつごつして、ぎすぎすして嫌いだと言っていたけれど、田舎からでてきたり、ひとりぼっちで頑張っていたり、夢を追いかけている人たちばかりだと言ったら、泣きじゃくって、そうやって見ると街の灯りはきれいだと抱きついてきた。
いい相手ができたら、ちゃんと私から離れていけというとすぐ泣いた。
マゾであることを、自分のひとつの特性だと少しずつ認識して、そのこととちゃんと向き合い、そしてマゾヒズムのあまさや被虐を享受しながら、人としてきちんと生きていこうとして、その通りになっていった。
Rちゃんは縄酔いし始める。
大人の女になりたての、うぶな体だ。
こころは素直で従順で、かわいい。
いつもするように、膝に抱きとると、おでこを胸に預けてきた。
SMはただ陵辱だけとか、命令だけとか、痛いだけとか、そんなものじゃない。
主従関係の触れあいだ。
静かで、きれいで、深い。
M性だからこそわかる、あまさやせつなさだ。
Rちゃんは、私の奴隷として、股縄で翻弄され、私の腕の中でかわいく悶え、あまえた。
許可を求めて、赦して解放すると、私の胸に倒れ込んできた。
余韻をすごしてから、いつものように仰向いて、足をM字に開いて、解放した女を飼い主の私に見せるのを躾けているから、従順にそうした。
涙ぐんでいた顔は今も忘れていない。