風が雪の匂いを運んだ。
手のひらに雪を受け止め、結晶のまま落ちてくるのだと私に教えてくれた。
北国は、雪が結晶のまま落ちてくる。
それをきれいだと思い、そのことに、人生のいろいろを重ねている純粋さが私を責めた。
今でも、ずっとこれからも、無邪気で、純粋なままだろう。。。
M性ともうひとつの大切なもの
体が強くないのに、横浜の駅で私を見つけて走ってきた。
リュックが揺れたことに、その子の青春を思い、私といつまでもいたらいけないと思った。
若すぎたから、まっすぐだから、そのことに戸惑った。
自分がまっすぐだった時を、いつも重ねて、今の自分に傷ついた。
それでも無邪気に微笑んだり、Mとして真剣に向き合う姿に、Sとして性として女として向き合いながら、美しいものを穢してはいけないとどこかで感じていた。
自分のM性と向き合おうとしていた。。。
ひとりぼっちを感じて、さみしくてどうしようもなくて、それでも頑張ろうとしていたのだろう。
はじめて部屋に行ったとき、茶碗や布団や本を見てそう思った。。。
頑張ろうとする自分と、マイナスと感じているマゾの部分をどうしていいのかわからない。
どっちかを選択しようとしていた。
若いから。。。
純粋だから。。。
両方認めていい。
愛を携えながら、迷いながら進んで、ゆっくり答えをだしたらいいし、答えなどなくてもいい。
流れに身を任せることが必要な時期もある。
Mだった。
そして、社会貢献できる自分でいようとしていて、優しさや思いやりを大切にしようと必死に生きていた。
それを、いつか同時進行できるときがくる。。。
奴隷の自分と、社会の自分と、もうひとつ、ほんとうのスピリットのままの自分。。。
私は飼い主だったからわかる。
頭の理屈じゃなく、体とか感覚とか、マインドでちゃんとわかる。
それぞれに距離感を持ち、ちゃんといつかできる。
M性は、愛を否定するものじゃない。
どっちかを選択する必要はない。
奴隷になるのは、解放だ。
奴隷に墜ちる自分を見て、そこから何かを見つける。
そして歩き始める。
主従の関係はそんな感じだ。
M性をプラスにできるのがいい女だと思う
股縄で街を歩かせた。
何も言わずに歩みが遅れ、振り返ると遠くを見るような、助けを求めるような、さみしげな、それでいて凜とした表情をした。
部屋に戻ると、私と二人だけになったことに安らぎを感じた。
そんな女の様が、自分でもわからない私だけがわかるステキさだ。
M所の魅力は、じつはそんなさりげないところだろうと思う。
お好み焼きをふたりで食べた。
カラオケに行った。
部屋への帰り道は、雪が流れて、風を見た。
街が白くて、純化していくように思った。
ポケットにつないだ手をいれた。
優しくしようとすると虐めてほしいと哭いた。
体は凌辱を求めていて、心は私を見ていた。
縄でくくられながら、心の自由と平安を求めていた。
時間は限られている主従の関係だとどこかで感じていた。
そんなのご主人様だったから、いつも、すっと、わかっていた。
だから、つながりははかなく、だから、瞬間を大切にしようとした。
帰るとき、口数が少なくなってきて、二人きりになるとすがりついて泣きだしたのが、かわいくてかわいくて。。。
悩んで、迷って、自分と向き合って、何周も何回も心の中をさまよって、答えがみつかる。。。
ほんとうは、自分の中に答えがあるので、奴隷として仕えても自分のことは自分の心が決める。。。
調教されること、奴隷でいること、管理され飼われること平安を得る。
命令を守ることはMとしての悦びだけれど、同時jにもうひとつ、スピリットが求める幸せもある。
それは同時進行していい。
どっちかを選ぶことない。
平安でいること、宇宙や他者に何かをできること、困った人に手をさしのべようとする自分でいること(できなくても、そうありたいと思うこと)。。。
幸せは、自分の心の中にしかないと、どっかでわかりながら、奴隷でいること。。。
迷いながらも、少しずつ前に進もうとする心に従うこと。。。
それでも、体は被虐を求める。
縛るとき、生まれたままの姿になって首輪をかけられるとき、そういうのを含んだ感じがいい。
教科書みたいな人生ばかりじゃない。
寄り道したとき、野の花をきれいと思うのが学びだ。
いろんな経験をして大人になったとき、寛容におおらかに、洒脱でいられる。
叱ったとき、マフラーを巻いた泣き顔に癒された。
裸にして、足を開かせて仕置きした。
ごめんなさい。。。
もうしません。。。
繰り返させて、バイブで虐めた。
よしよしと許すと、また泣いた。
涙の色は違っていた。
経験したのは、勇気をだして踏みだしたからだ。
自分を失わないようにしようと思いながら、真剣に向き合い、調教された。
勇気と一生懸命さと純粋さは、試練に向き合うとき力になる。。。
SMはただの性欲だけじゃない。
プレイだけじゃない。
お別れをちゃんとするために会いにきてくれた。。。
後手、股縄で頑張るんだぞというと、泣いていた。
東京駅で人混みに吸い込まれながら、振り向いて私を探して振り向いた。
私とのことは、若気の至りだし、そっとした思いでなればそれでいい。
Mであっていい。
それは性癖じゃない!
孤独やあまえたい、認めてほしいという心の奥のものだ。
卒業しても、誰かの奴隷でもいいけれど、自分を大切にいてほしい。
SMはすてきなもので、あっていいけれど、なくてもいい。
雪の季節が、私の時間に加わった。
それは優しいパワーになった。
北国の夜の空は群青色だった。